今の時代、あらゆる食品が四季を通じて出回り、「旬」が薄らいでいます。白然の風雪に耐えて、その時々でしか味わえないもの。その幸せを私は心ゆくまで楽しみたいのです。

 正月の2日、村木沢の山に行きました。雑木林、杉の木、今にも落ちそうな赤く熱した柿(かき)、枯れ草…絵心誘う風景です。

 心地よい風を受けながら登り、日当たりのよい場所で立ち止まった時でした。土の中から苛が出ているのを見つけました。蕗(ふき)のとうです。目を疑いました。この時期に見たのは初めてだからです。落ち葉をかき分けると、可愛らしい蕗のとうが100個はあり、春が来たように心が弾みました。

 旬は食べ物だけでありません。大雪になったのはそれから間もなくです。豪雪で厳しい生活を強いられている方には申し訳ないのですが、この風景もまた私の楽しみのひとつなのです。

 1981年(昭和56年)2月上旬の新雪の日、飯塚(山形市)に車で菓子の配達にいった帰り道です。夜11時ごろでしょうか。風もなく、雪景灯火に照らし出されたポプラの樹氷が、夜空を背に明るく浮かび上がっています。車から降り、目に入る風景と冷やされた静けさを思いきり吸い込むと、柑と白のイメージが私の中にこみ上げてきました。それが、作品「道」です。

 単色に近い色彩ですが、雪のやや陰った部分に使われる微妙なハーフトーンの変化と画面の一点に向かって集中していく雪道の面白さを描ききれたとき、「冬句」をのみ込んだ、と感じたのです。


(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)
 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員