かぼちゃ

 人生の巡りあわせというものは、ほんとうに不思議なものです。私が絵筆を握る、きっかけを作ってくれたのは3人の方です。その1人は畳屋さん。右も左もわからず、日々、菓子づくりの修行をしていた16歳の春でした。月2回の休みを使って画(か)いた、専弥寺周辺の風景。その絵を部屋の片隅に置いておいたら、畳交換に来てくれた職人さんの目に留まり、言柴をかけてくれました。いい絵だね。描き続けなさいよ」。私の絵が人の気持ちをなごませるなんて--この一言が私の心に火をつけました。

 2人目は通信教育で美術教育を受け、本格的に絵を描く基本を教わった山形東高の飛塚安吉先生です。

 3人目は、北海道の幌内の炭鉱の町に住んでいる私の姉の知り合いだった先生です。道展の会員で、毎月、デッサンやスケッチを5、6枚送ると画用紙の裏こ、1日1枚描くこと、デッサンを重ねること、色を濁さず綺麗(きれい)な色を出すこと、物をよく見ること…など必ず批評をしていただきました。

 「かぼちゃ」は私が19歳の時の作品です。評は「この静物は良い素質が現(あらわ)れています。こんな調子の作品をまた、見せてくださいね」。むだのない空間、色の輝き、質感の確かさ。これらが一体となった画面を、初めてほめていただきました。

 3年間も指導していただいたのに、実は、私は1度も先生にお会いしたことがないのです。名前も小荒先生としか覚えていません。作品を通してレか親交がなかったのですが、それだけに絵の面白さ、厳しさ、宙びを単刀直入に指摘していただきました。畳屋さん、飛塚先生、そして「幻の小荒先生」。3人との「出会い」が画面に向かう私の心の支えなのです。

(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)
 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員