春ほど待ち遠しい季節はありません。今年の冬はとりわけ雪が多かったので、春の訪れは感動的ですらあります。その兆しを、私は店の周りの置いた、大小合わせて200鉢ほどの盆栽の花や木々に見るのです。

 「松」「さつき」「もみじ」「梅」‥‥あらゆる植物にとって春は躍動の始まりです。咲き競う花や、芽吹き、緑萌(も)える草木には、再生の喜びが満ち溢(あふ)れています。中でも梅の花がすばらしい。

 盆栽の楽しみは花をめでるだけにとどまりません。樹形と一体となった花、さらに花のない寒樹の肇でさえも楽しめる、古木がまとうシャリ芸の美。100年か150年たち、枯れ果てたかのように見える老梅が、3輪5輪と花をつけ、そこから放たれる高貴な香りが私の鼓動を高ぶらせてくれます。

 でも、そんな「淑女」とは異なった趣で私を引きつけてやまない花があります。桜です。梅の花が芳しく、清楚(せいそ)であるならば、桜は人の集う華やかな宴とでもいいましょうか。

 作品「桜」は1977年(昭和52年)に描きました。霞城の土手の道には、柔らかい陽光を浴びた草や木々の影がありました。そして、淡い色を類比も重ねる桜が春の到来を祝福しています。見る度に、ゆるやかに曲がる小道が、私を春宴へといざなうのです。

(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)
 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員