酷暑
 

 

 今から7年前のことです。絵を描き上げると真っ先に見てもらっていた上山市の工藤善雄さん宅を訪れた帰り道、見事な夕日に出あいました。

 太陽が沈む直前のドラマチックな光景は生命感にあふれ、胸に迫るものがありました。「この華やかな赤を基調に、内に秘めた生命を現すような抽象画をかけないか----」。そんな思いでこの「酷暑」という作品を描きました。朱色が静けさの中で燃えたぎる熱さをイメージさせます。この色が出たときは胸がどきどきしました。

 そんなこともあって、この絵を見ると工藤さんを思い出します。残念ながら3年前に89歳で亡くなりましたが、晩年まで明るく若々しく、酉年のような心の持ち主でした。
85歳を過ぎてもみずみずしい絵を描き、新しい画集が手に入ると私を自宅に招き、一緒に見たものです。

 奥さんも気持ちのやさしいおだやかな方で、コーヒーを飲みながら絵の話をするのが好きでした。花作りも得意で、庭にはいつも季節の花が咲き乱れていたのを思い出します。いつもはおとなしい奥さんが、私の描いた絵を前にして、ぽつりと漏らす一言が的を射ていて、ずいぶんと参考になりました。

 工藤さんはよく、絵にも人生にも「生きる気」が大切だ、と言っていました。青春のような若々しい気持ち、という意味でしょうか。「酷暑」を描いているときも、その言葉がいつも頭の片隅にありました。

 物は豊富でも、なかなか自分の進む通がつかめず、「迷いの時代」と言われる今日。それだけに、「生きる気」という言葉の持つ輝きが、暗やみを照らしてくれるように思われます。

(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)
 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員