安らぎ
 

 

  つい1カ月ほど前までの暑さがうそのように、光や空気が急に優しくなり、風が季節を運んでくる。木々の葉が次第に色づき、日に日に輝きが増して心躍る秋が好きだ。

 7年前、季節はちょうど今ごろだったろうか。黄金色の稲穂を見ながらくねった道を通り、県民の森を抜けて、目当ての山にたどりついた。草原を渡る気持ちよい風、土の感触。鳥の鳴き声を聞きながら雑木林をかきわけて山に入ると、木の枝にまとわりつくように伸びた蔓(つる)に、大きめのアケビが鈴なりになっていた。

 その様子は「アケビの山」のようで、まるでメルヘンの世界。子供のように夢中になって採り始めると、たちまち「はけご」がいっぱいになった。山の贈り物に感謝しながら、心地よい気持ちで山を下りた。

 帰り道の途中、閑静な住宅街の片隅にある喫茶店に立ち寄った。香ばしいコーヒーの匂い、しゃれたドライフラワー、壁に掛かったモジリアニの絵。シャンソンが流れる中、ゆったりとした気持ちでコーヒーを味わった。

 少年時代に立ち返ったような「アケビの山」での出来事と、洒落た喫茶店で過ごす落ち着いた時間。二つの対照的な、そしてすばらしい一時を絵に描きたいと思い、絵筆をとった。

 モダンな色調、微妙な発色、新鮮で大胆な構図…。

 自分なりの夢と感情でいっきに描き上げた作品です。

(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)
 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員