だれも描いたことのない新しい絵を画(か)きたい。絵筆を握る者なら必ず考えることです。私がそんな思いに無性に駆られたのは、ちょう
ど、山形市鉄砲町から十日町に菓子工場(こうも却を引っ越した1960年(昭和35年)ごろのことです。菓子作りが軌道に乗り、絵にもそれなりの欲が出てきたときでした。

 当時、大好きだった映画の一つであるディズニー作品に、動物たちがクラシック音楽に合わせて森の中を自由奔放に遊び回る場面がありました。夢や遊び心が画面にあってこそ私の目指す絵だと思い続けてきましとから、ディズニー映画にある楽しさ、面白さは絵に通じるもの、音楽の調べの美しさと弾むリズム感を、絵の中で表現しようと試みたのが「渚(なぎさ)」です。

 「渚」といっても夜の海を直接イメージしたのではありません。縦横の線と柔らかな空間、しゃれた響きと深みのある空間…自分の中に膨
らんだ写実と具象のせめぎ合いを紺色を基調にして描きました。

 64年(昭和39年)、「渚」は第20回県展で最高賞である県展賞を受賞、審査員から「(作品は)一見抽象化されているが、新しい具象とい
う解釈も成り立つ」という評価をいただきました。でも、私がもっともうれしかった批評は出展前に受けました。作成を終えるといつも作品を
見せていた祖母がぽつりと語ってくれた−言です。

 「粋(いき)だな」


(水彩画と文 渋谷勝男=和菓子店主)

 
     

 

   

 

   
       
 
朝日新聞山形県版に、夢彩彩を連載しておりました。

夢彩彩、web山形ホームページにてぜひお楽しみ下さい。
渋谷勝男の経歴
   
昭和12年 朝日町宮宿に生まれる
  飛塚安吉先生の指導で17才で県展初入選
  21、22才で個展開く
  県水彩画展 −− 市長賞 山新賞
35年 示現会入選
37年 県展奨励賞
38年 日本水彩連盟入選、以後5回
39年 県展賞
42、44年 県展山新賞
45年 県展賞
56年 示現会湊賞、日本水彩画展奨励賞
   
現 職  県展無鑑査、白風会会員、県美連会員、
     県水彩画会員  示現会準会員