記者が歩いたみちのくの四季


八甲田(青森)

春が来ると、必ず思い出すのが、八甲田の雪の回廊です。というのは、そろそろ開通しているかと思って行った時に、残念ながら数日違いで開通しておらず、見られなかったからです。東京でもいま、さかんに「八甲田雪の回廊」のツアー募集のパンフレットやチラシが目に付きます。それを見るたび、八甲田への道を閉ざしていた鉄パイプのゲートを思い出すのです。仕事柄、ちょうどいい時にいけることはそう多くないので仕方ありません。

「雪の回廊がおもしろいよ」という話を同僚から聞いたのは、ちょうど八甲田のあたりを車で走っているときでした。「バスの高さよりかなり上まで積もった雪を道路だけ除雪しているから、雪の壁になっているんだ」「溶けると崩れないのかな?」「触ってきたけど、締まっていて固かったよ」「へえー」。そんな会話だったと思います。  雪の回廊は想像するしかないので、興味がある方はどうぞ。そろそろ「開通」するのではないでしょうか。  その話を車を走らせながら聞いた晩秋も、なかなかのものです。八甲田の山頂は雪をかぶり、道路脇にも雪が積もっているというときに通りました。睡蓮沼という、高原の沼があります。春はミズバショウがきれいだそうです。それよりも(といってもミズバショウは見ていませんが・・・)沼越しに見る雪をかぶった八甲田の景色、絶景ともいっていいでしょう。ちょうど天気がよかったこともありますが、たまたま通ったときにこうした景色を眺められるのも、好運といっていいのではないでしょうか。

睡蓮沼から、雪中行軍遭難記念碑に向かいました。その途中、思わず車を降りてみた不思議な光景がありました。葉を落としたブナの木が密集し、枝が道路を覆うように両側にずらりと並んでいる光景。なかなか、見られない構図です。通っていて、異次元の世界に入っていくような感じになりました。 さて、雪中行軍遭難記念碑。1902年(明治35年)、歩兵第5連隊第2大隊210人が雪の八甲田で遭難した事件は、映画化もされました。立ったまま凍りついていたという兵士の像が建っています。振り返ると、ここからの八甲田の山並みもきれいです。 ひと冬で約9メートルもの雪が降るそうです。いまはその雪が「雪の回廊」という観光の目玉を生み出しています。かつて、その積雪の中で遭難したという痛ましい事実は、記念碑から眺める優美な八甲田からは想像できませんが、忘れてはならない教訓なのでしょう。